新型コロナウイルスの感染防止対策で、換気の状況を知る目安になるとして、空気中の二酸化炭素濃度(CO2)を調べられる「二酸化炭素濃度計」が役立つとされています。
人が吐く息にはCO2が含まれているので、換気の悪い密閉空間であればCO2濃度が上がり、換気の状況を可視化することが可能になるということです。
では、実際に密閉空間だと、どのくらい上昇するのでしょうか?
さらに「換気扇」を回した場合の効果は、どの位あるのでしょうか?
特定の条件下ではありますが、二酸化炭素濃度計で、実際に計測してみました。
目次
二酸化炭素濃度計が換気の目安になる理由
屋外のCO2濃度は415ppm前後で、時期や場所さらに時間帯によって異なります。(参考)
冒頭に少し書きましたが、人が吐く息にはCO2が含まれているので、換気の悪い密閉空間で呼吸をしていると、室内のCO2濃度は徐々に上がります。
厚生労働省は、換気の悪い密閉空間にならないようにするための目安として、室内のCO2濃度を「1,000ppm以下」に保つよう推奨しています。
つまり、換気が完璧に出来ていれば415ppm前後の値であり、換気が悪いほどCO2濃度は高い値を示すということです。
厚生労働省が示した感染防止のための換気の目安としての「1,000ppm以下」は根拠がよく分かりませんが、「建築物環境衛生管理基準」で定められている基準に従い、1,000ppm以下にしたのではないかと思います。
二酸化炭素濃度の変化
計測条件
約5畳の部屋の中に、私が1人。
締め切った状態で、どの位の時間で二酸化炭素濃度が上昇するのか?
計り始めの室内CO2濃度が750ppmと、やや高い値からのスタートになりましたが、実験スタート。
5分毎に鳴るタイマーをセットし、表示数値を目視で確認し記録しました。
測定器:GC-02 【測定方式:非分散型赤外線式吸収法(NDIR)】
「密閉」空間でのCO2濃度変化
3時間10分間、部屋に閉じこもったまま仕事をしていたところ、CO2濃度の変化は次のようになりました。
計測開始から
- 20分後、1,035ppm
▶1,000ppmを超えると、思考力に影響が出るとされています。(一般的に) - 65分後、1,530ppm
▶1,500ppm位になると、なんとなく頭がボーっとし始めてきます。(私の体感) - 125分後、2,020ppm
▶2,000ppm位になると、息苦しさを感じ始めます。(私の体感)
「換気扇」を作動した時のCO2濃度変化
計測開始から3時間10分で2,370ppmになり、CO2濃度の上昇速度が緩やかになりました。
ここからは、部屋を閉め切ったままの状態で、「毎時30㎥超の強制換気で感染リスクを減らす提案」として当サイトで紹介している、戸建て住宅用の「屋根裏排気型換気扇」を動かしてみました。
あえて部屋のドアを閉めたまま、ドアの下にある2mm程度の隙間からのみ空気が入る状態にして、厳しい条件で部屋を換気してみました。
先ほどのグラフに、換気中の二酸化炭素濃度の変化を追加したものです。
換気扇を回し始めた直後から、CO2濃度は一気に下がり始めます。
2,370ppmに達していた二酸化炭素濃度は、20分後には995ppmまで下がりました。
その後は徐々に緩やかな減り方になり、換気扇を回し始めてから60分後には605ppmまで下がりました。
考察
密閉空間で1,000ppm以下を保てる時間
約5畳の部屋に1人だけいた場合の二酸化炭素濃度の変化です。(人の体のサイズ等により、排出される二酸化炭素量は異なります)
経過時間 | CO2濃度(ppm) | CO2濃度差(ppm) |
---|---|---|
0分 | 750 | - |
5分 | 825 | +75 |
10分 | 895 | +70 |
15分 | 965 | +70 |
20分 | 1,035 | +70 |
コロナウイルス対策を考えたとき、室内には2人以上いるという条件になるでしょう。
10畳の部屋に2人いる環境であれば、この表とほぼ同じになると思われます。
計測開始が750ppmと高めでしたが、この表から5分で70~75ppmの上昇ですので、600ppmからのスタートであれば、約30分で1,000ppmを超過すると思われます
8畳程度の部屋に2~3人の人がいれば、もっと早く二酸化炭素濃度は上昇するという事が分かります。
この結果から、5畳に1人の密度の場合、1,000ppm以下に保つには、15分に1回位は窓を全開にして空気を入れ換える必要がありそうです。
なかなか厳しいので、換気扇に頼るのが簡単そうですね!
換気扇で1,000ppm以下を保つには
計測した環境が非常に限定的なので参考にならないかもしれませんが、結果をまとめておきたいと思います。
計測結果の1,000ppm以下の部分だけを抜粋して表にしてみました。
経過時間 | CO2濃度(ppm) | CO2濃度差(ppm) |
---|---|---|
0分 | 995 | - |
5分 | 876 | -119 |
10分 | 792 | -84 |
15分 | 715 | -77 |
20分 | 672 | -43 |
25分 | 635 | -37 |
今回使用した屋根裏廃棄型換気扇は、カタログ規格上は、毎時300㎥(毎分5㎥)の風量があります。
5畳(おおよそ15㎥)の空間と考えると、3分で排出される空気量ですが、締め切った部屋のドアの下の隙間から入る僅かな風、という厳しい条件で計測しているので、空気の入れ替わりに時間がかかっています。
ドアを開けた上で換気扇を回せば、空気抵抗が無くなる分、もっと早く換気が可能と思われます。
考察のまとめ
これらの結果から、5畳の部屋で1人の場合には、最低20分に1回の割合で、窓を全開にして空気を入れ換えるか、10分間換気扇を回せば、約1,000ppm以下を保つことが出来そうだという結果になりました。
換気扇を使用する場合は、出来ればドアを半開きにした状態で、屋根裏廃棄型換気扇を動かした方が良い。
5畳の空間に1人より多い割合で人がいる場合には、換気扇は回しっぱなしの方が良い可能性がありそうです。
まとめ
コロナウイルスに感染した人が、食事・会話・咳・くしゃみ等で、口から飛び出したウイルスを含んだ飛沫はエアロゾル化し、乾燥した状態で空気中を長時間漂い続けます。
未感染の人が、高濃度のコロナウイルスを吸ってしまったり、濃度が低くても長時間吸い続けてしまうと、感染リスクが高まってしまいます。
換気をすることで、空気中のコロナウイルスの濃度を下げれば、感染リスクを減らせます。
厚生労働省は、目安として1,000ppm以下としています。
1,000ppmまでは、比較的早い時間で下がるので、あまり空気が入れ替わっている感じがしません。
しかし、700ppm前後になるまで換気扇を回すと、感覚的にですが結構空気が入れ替わっている感じがしました。
1,000ppmは最低限のレベルと言えそうですが、理想的な換気をすればするほど冬場は寒いです。
二酸化炭素濃度計を活用して、1,000ppm以下を基準にした換気をするのが良さそうです。
因みに、乗用車の車内でも測定してみましたが、狭い空間なので人数がいればいるほど、恐ろしい勢いで上昇します。
車内では、外気の取り込みが必須です。(都内では排気ガスが入ってくる問題はありますが..)
使用した測定器のご紹介
今回使用した測定器は、COXFOXの二酸化炭素濃度計GC-02という機種で、現在は販売終了しているのですが、OEM商品だったようなので、大元の(株)マザーツールで製造しているZG106をご紹介そます。
用途は家庭やオフィス用ですが、測定方式が、NDIR(非分散型赤外線式吸収法)という方式で、正確に測れるそうです。
電源は、単三電池4本(エネループ可)、もしくはACアダプター接続になります。
蛇足
地球温暖化の原因とされている、温室効果ガスの一つである二酸化炭素の濃度は、年々増加しているという話をニュースで聞いた事があるかと思います。
次の図は、この記事を書く際に偶然目にした、気象庁「二酸化炭素濃度の経年変化」というページにあるグラフです。
出典:気象庁(気象庁の観測点における二酸化炭素濃度及び年増加量の経年変化)
このグラフから推測できることは、今吸っている空気よりも、来年は二酸化炭素濃度の高い空気しか吸えない、ということです。
工業化が始まるより前の、1750年以前の平均的な値は、278ppmだったそうです。
気象庁が綾里で記録を続けているデータによると、1990年のピーク値は、361.9ppm。
年々確実に増えて、2020年のピーク値は、421.3ppm。
1990年から2020年までの30年間で、約60ppm増えています。
政府が2050年には二酸化炭素排出を実質ゼロにすると掲げましたが、今と変わらぬ上昇率が続けば、2050年には481ppm位になっている計算です。
人間が生きているだけで排出しているCO2。
車や工場、火力発電、ゴミの焼却、などなど、経済活動によるCO2排出を減らすのは必須として、同時に世界的に森林を増やすことも必要でしょう。
コロナ禍でのCO2測定器の普及を機に、CO2濃度への関心がより高まる事を期待したいと思います。
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